第35章

その時、ドアの外からノックの音が聞こえた。

「高橋さん、病院の外に松本さんという方がいらっしゃって、あなたにメッセージをお預かりしました」

「窓の外を見てください」

稲垣栄作は眉をひそめ、視線を窓の外に向けた。静寂の闇夜に、一筋の光が天に向かって噴き上がり、ドンという音とともに、夜空全体を明るく照らし出した。

まるで美しく壮麗な絵巻物のようだった。

七色に輝き、とても美しい。

高橋遥の心に驚きが広がり、彼女の瞳にもう一度光が宿った。

彼女は分かった、裕樹さんがあの夜遅れてくれた誕生日プレゼントが何だったのかを。

彼女はふと感慨深くなった。自分の誕生日に、夫は愛人のところまで遠...

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